桜咲く
2023/3/31
2023/3/31
ありえない程のスピード感で月日は過ぎ、
気付けば我々一家は、岡山市内での生活を送りつつある。
引っ越しという引っ越しはできておらず、まだ冷蔵庫も洗濯機も無い。
水道、電気、ガスは通っていて、石油ストーブと石油のストックも幾らかある。
近所にスーパーやらコンビニやらドラッグストアやら、こんなに無くても良いのに、というくらい点在している。
まぁ、雨風凌ぐ家があり、これだけ揃っていれば、生きてはゆける。
麦も一緒に居るものだから、朝夕は必ず散歩に行かねばならないし、
昼と寝る前、加えて気の向いた時には十分な広さの庭にも出して、トイレタイムの後、ちょっと遊ぶ。
この団地には、沢山の公園がある。
そして一様に、桜が植えてある。
団地に上るまでの坂も、多数ある公園も、稀に個人宅にも、沢山の桜が植えてある。
今年はちょっと早く、見事に桜満開のようだ。
テンション上がりまくっている自分に、妻が、『桜好きなん?』と。
え?逆に、桜嫌いな人いるん!?と自分。
うちの妻は、絵に描いたような『花より団子』な人だ。
なんなら、花より団子よりビールな人だ。
自分もビールは好きだけど、妻のビール愛の前では、無力さを感じるほど。
お酒はいつでも飲める豊な時代ではあるけれど、
もっと贅沢なのは、いつかの先代達が植えた桜が咲き誇る、こんな素敵な場所を歩けることだ。
麦の散歩はまさに、日課だ。
そんな日常に、沢山の桜が満開で彩りを添えてくれる。
それは期間限定であり、特別であり、一瞬であり、見事なものだ。
我々はここに引っ越してきて、まだ3日だ。
桜が満開で出迎えてくれた、と勘違いしても誰も悲しまないだろう。
数日もすれば、花びらは散る。
新芽が出て、葉が生い茂り、木は成長し、他の生命を支える糧にもなる。
時代は巡り、回っている。
村の友人たちが一緒に歌ってくれた歌にも、くどいほど出てきたフレーズだ。
いつか我々も、桜の花びらのように散っていく。
いつ訪れるか分からないその日まで、人生を謳歌したいと思うのだ。